2018年11月9日、水戸地方裁判所は、茨城県の農家に対し、元中国人技能実習生の女性への未払い賃金約200万円の支払いを命じる判決を下しました。この判決は、技能実習制度の下での労働者の権利侵害が明るみに出た象徴的な事件として注目されています。
事件の概要
原告の中国人女性は、2013年10月から約1年間、茨城県の農家で大葉(シソ)の栽培に従事していました。日中の作業後、夕方から深夜にかけて大葉を10枚ずつ束ねる作業を行っていましたが、農家はこの作業を「請負契約」と主張し、1束あたり2円の報酬しか支払っていませんでした。時給に換算すると約400円と、最低賃金を大きく下回る水準です。
農家側は「独立した請負」として責任を回避しようとしましたが、裁判所はこの主張を退け、「使用従属性」があるとして、未払い賃金と付加金の支払いを命じました。
技能実習制度の構造的問題
この事件は、技能実習制度の構造的な問題を浮き彫りにしています。技能実習生は建前上「技能移転」が目的とされますが、実態は安価な労働力としての搾取が横行しています。
賃金の未払い、長時間労働、過酷な労働環境、住居や移動の自由の制限など、多くの実習生が深刻な人権侵害に晒されています。また、日本語力の不足や制度に対する無知から、相談や通報すら難しい状況に置かれています。
今後に求められること
日本政府は「特定技能」など新制度を導入しつつも、技能実習制度の廃止には踏み込んでいません。このままでは、似た構造による搾取が繰り返されることになります。抜本的な制度見直しと、労働者保護の強化が急務です。
情報源
- 技能実習生に未払い賃金 農家に約200万円支払い命令 水戸地裁(毎日新聞)
- 技能実習生に最低賃金以下で働かせた農家に賠償命令 「請負契約」主張退ける(弁護士ドットコム)
- 農家の“偽装請負”認定で賃金未払いに200万円支払い命令 技能実習制度の落とし穴(東洋経済オンライン)

これは、正直、氷山の一角です。
表向きは“技能移転”と言いながら、実際は安い労働力として使い倒す──そんな構造がまだまだ全国に残っています。
特に“請負契約”を装って賃金をごまかす手口、僕が見てきた中でも本当に多いです。
実習生の皆さん、そしてその周りにいる日本人の皆さん。
どうか“おかしい”と感じたら、ひとりで抱え込まずに相談してください。
法は、ちゃんとあなたの味方をしてくれます。
一緒に、声を上げていきましょう。
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