「逃げるしかなかった」──そう語るのは、技能実習生として日本に来た若者たちです。
日本の労働現場を支えているはずの彼らが、なぜ命がけで失踪しなければならないのか。その背景には、制度の根本的な問題と構造的な搾取の実態が横たわっています。
失踪者年間7000人超、その多くは“制度の犠牲者”
出入国在留管理庁の発表によれば、近年、技能実習生の失踪者数は年間7,000人を超える状況が続いています。これは単なる「本人の問題」ではなく、過酷な労働条件、低賃金、過重労働、暴力・ハラスメントといった職場環境から逃げざるを得ない状況に追い込まれている証拠です。
■ ベトナム人実習生の証言:
「残業代も払ってもらえず、契約内容と違う作業を強いられた。体調が悪くなっても休めない。管理団体に訴えても“我慢しろ”の一言。もう、ここにいる意味はなかった。」
こうした声は一部ではなく、全国各地で同様の証言が相次いでいます。
監理団体の機能不全と“縛り付けられる制度”
技能実習制度には、本来は実習生を保護・監督する立場である“監理団体”の存在があります。しかし、その多くが受け入れ企業との癒着や利害関係により、実習生の訴えを無視、あるいは抑圧する立場に回っている実態が指摘されています。
加えて、技能実習生は転職の自由がほとんどなく、「嫌なら辞める」という基本的な選択肢さえ認められていません。劣悪な環境でも働き続けるか、逃げるかの二択──それが今の制度の実情です。
逃亡後のさらなる困難とリスク
失踪後の実習生は、在留資格を失い、“非正規滞在者”として扱われます。労働基準法などの保護からも外れ、低賃金での違法労働や搾取、さらには犯罪被害に巻き込まれる危険性も高まります。制度の歪みが、二重三重の苦しみを生み出しているのです。
制度の本質的な見直しが必要
こうした状況に対して、政府は新制度「育成就労制度」への移行を検討していますが、根本的な問題──実習生の人権保障、労働者としての権利付与、転職の自由確保など──を解決しなければ、同じ過ちを繰り返すだけです。
情報源・参考記事
- 技能実習生の失踪、背景にあるものは?(朝日新聞GLOBE+)
- 出入国在留管理庁「技能実習制度に関する統計資料」
- 外国人技能実習機構(OTIT)公式サイト
- ベトナム人実習生・支援団体の証言記事・報告書(2021–2024)

“失踪”という言葉では片付けられません。
それは、制度の隙間に追い込まれた末の、命がけの“決断”なんです。
何千キロも離れた母国から、夢や希望を抱いて来日した若者たちが、職場での搾取や暴力、孤立に耐えかねて姿を消す──この現実を、どうか“自己責任”のひと言で終わらせないでください。
私たちは何度も、彼らの「もう限界です」「逃げてもいいですか」という悲痛な声に向き合ってきました。
本当は逃げたくなんかない。でも、そこに居続けたら心も身体も壊れてしまう。
制度の歪みは、“逃げる側”ではなく、“追い込む側”にある。
どうかこの現実に、耳を傾けてください。
私たちはこれからも、技能実習生の声を届け続けます。
声を上げれば、変えられると信じて。
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